『世界名作ショートストーリー① モンゴメリ 白いバラの女の子』
モンゴメリ/作 代田 亜香子/訳 佐竹 美保/画
理論社/刊
定価1,188円
魅力にあふれた短編10話
モンゴメリの作品といえば、長編小説である『赤毛のアン』シリーズが有名である。刊行以来日本でも愛読され、作品の舞台であり作者の出身地であるプリンスエドワード島を訪れる人も多い。
モンゴメリは、おもに作家活動の初期の頃、それぞれ500編におよぶ短編や詩も発表している。この本には、それぞれ個性と魅力にあふれた短編10話が選ばれ収録されている。表題にもなっている『白いバラの女の子』では、ローレンスさんがなくなった夜の不思議な出来事を描く。ローレンスさんは若い頃、死に別れた恋人マーガレットと約束をしていた。ローレンスさんが息を引き取るとき、必ず迎えにくるという約束。その夜、マーガレットが現れて言う「・・ねえ見せてあげるわ。ほんとうの愛がどんなに強くて美しいか。死さえ乗り越えられるのよ。私たちみたいに心から愛し合えば、その愛はかわることはないし、天国に行っても続くのよ。」と。
この他にも、『きっと兄さんが』では、信じていれば必ずかなうこと、『エリザベスの娘』では、仲たがいしていた兄妹を姪がひとつにしていく。『歳月のプレゼント』では、恩人の窮地を救う。『エステラのしあわせ』では、婚約者が浮気をするが、結局自分のもとに戻ってくる。『親切な人』では、汽車で横に座った親切な人が犯罪者だった、など。
赤毛のアンとはまたひと味違うお話ばかりだが、自然描写の美しさ、人間描写の豊かさは変わらず、どのお話も読後感がいい。日本語訳も読みやすく、明るく前向きな気持ちになれる短編集である。
(評・岡山市立妹尾中学校司書 木山 展子)
(月刊MORGENarchive2015)